科学予算、国からのムチとアメ | 博士号取得大作戦! -presented by Mika-

科学予算、国からのムチとアメ

きっこのブログ を見て、かなりハゲしく影響を受けた未果です。なんだか、世の中はワタシが思っているよりもはるかに複雑で、どうしようもなく乱れているのかもしれないなぁと感じました(笑)。まぁワタシにできることは、このブログを通して、「科学世界の実際・実態」を少しでもお伝えすることなのかも。そう、これもいつものきまぐれですが、少々おつきあい下さい。


最近、自分の進路についてものすごーく悩んでいて、「何もできないワタシは、あまり世の役に立ってないんじゃないか」と悲しく思ったりもするわけだけど、落ちこんで「ムダ!」とか叫んでばかりじゃ、しかたないよね。仮にも生物学をかじった人類のハシクレ、自分が生きているには何らかの意味があるのだと思いたいし、たぶん心のどこかでそう思ってるんだとおもう。


というわけで、本題。

今日は、サイエンスポータル のリンク先で見つけたこんな記事を紹介します。「第57回総合科学技術会議議事要旨 」ってものなんだけど、この会議は、小泉改革の一部、「中央省庁等改革基本法」によって内閣府に置かれた機関で、日本の科学技術の方向を決定する、いわば舵取り役みたいなもの。小泉首相もメンバーに入っている重要な会議で、これを読めば、これからの科学技術分野に対する国の方針がなんとなく分かる。


最新の第57回会議は7月26日に開催されていて、女性研究者の雇用問題や研究支援者問題等、いろんな検討がなされている。気になる人は読んでみてください。もちろんチマタで大盛りあがりの、「予算問題」についても話し合われた。早稲田の松本氏による資金不正流用疑惑をふまえた上で、では、今後の予算はどう運営していきましょうかね、という基本方針についての話し合いだ。


いきなり結論を紹介すると、今回の問題がなぜ起きたのかを全部で5つの問題点にまとめ、それぞれについてどう対応するか、対応の方向性が決まった。以下は、該当資料 から抜き出して意訳を加えたもので、1行目が問題点、2行目の矢印の後が対応の方向。


1) 研究資金の支出、チェックシステムに問題があった

→経理体制を強化


2) 消耗品予算が不正の隠れ蓑になっている

→物品納入のチェック徹底


3) 架空アルバイトを見抜けなかった

→研究室への立ち入り調査など、監査体制の強化


4) 告発情報の通達が遅かった

→告発窓口等の設置


5) 不正行為をやったと思っていない

→教職員への教育


つまり、今後は会計予算へのチェックがますます厳しくなるということです。該当する研究者の方、がんばってください。無責任ですいません。


これだけでは罰ばっかりで、研究活動が萎縮しそうなカンジもしますが、報告書の中ではいちおう、「研究活動の推進が最終的な目的であり、単なる規制等の強化や煩雑な手続き等により、いたずらに研究活動の萎縮を招かない」(原文ママ) とクギもさしてあります。今後、手続きや事務処理ばかりがメンドウになって、研究が進まなくなったら、「これでは研究が進みません」ときっちりモンクを言ってみるのも大事かもね。


そしてもう一つ、重要な「予算の繰り越しについて」も話が出ました。なんと、科研費ではすでに予算の繰り越し制度ができているんだそうです。エエーッ! 知らなかった! 15年度に制度ができた当初は、公共事業予算の年度繰り越しを参考にしたため、「自然災害によるやむを得ない事情」でしか繰り越しできなかったらしいんだけど(なんじゃそりゃ?)、今年からは科学技術分野でも手続きが簡単になり、申請しやすくなっているはずなんだそうです。

とはいえ、繰り越し制度の周知徹底はまだ不十分なようで、その点は今後改善されるとのこと。科研費は今では学生に旅費など出せるようになっている、という話も聞くので、少し前に比べて、状況はマシになっているのかもしれません。


ついでだから、繰り越しできる条件を抜粋してはりつけます。


以下引用

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<科学研究費補助金の繰越事由について>
繰越しの対象となるのは、下記「Ⅰ」の6つの繰越し事由のいずれかに該当し、交付申請書において確認できる研究計画の一部に係る経費を繰越すことが必要な場合であり、かつ、翌年度内に完了する見込みのあるものである。また、下記「Ⅱ」に繰越事由ごとに具体例を示しているが、繰越しの具体的理由はこれだけに限られるものではない。


Ⅰ繰越し事由
(1)研究に際しての事前の調査
(2)研究方式の決定の困難
(3)計画に関する諸条件
(4)気象の関係
(5)資材の入手難
(6)その他のやむを得ない事由((1)~(5)の事由に類似した事由に限る)


Ⅱ繰越し事由の具体例
・研究の進展に伴い、当初予想し得なかった新たな知見が得られたため
・研究計画を実施する上で必要な装置が故障したため等
(科学研究費補助金に係る歳出予算の繰越しの取扱いについて(平成18 年4 月1 日18
文科振第1 号文部科学省研究振興局長・大臣官房会計課長通知)より抜粋)

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(以上、科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について(中間報告)(PDF) p.25より引用)


科研費等の競争的予算を取れたみなさん、がんばって予算の年度繰り越しにはげんでチョンマゲ。ワタシ、いったいいつの人??


そういえば最近、ライターの仕事をもらってる担当編集の方に「未果さんは最近、原稿の題名のつけ方がオヤジっぽすぎ」とダメだしをくらいました。居酒屋で100円ビールを飲み過ぎて、どうやら脳みそまでオヤジ化してきたようです。よしわかった、それなら今後は、焼酎を飲むことにしよう。えっ、ますますダメ?? 弱ったなぁ(笑)


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あっ、ちなみに、例の早稲田問題は、毎日新聞の記事 によると、「厳密さ欠けるがねつ造ではない」という中間報告が出たそうです。この中間報告を出したのは、日本分析化学会( 日本化学会とは別組織だよ!)。同記事中にある、日本分析化学会の小泉会長の「(この論文の)著者は2人とも、この解析の専門家ではなかった」というセリフには思わず失笑しちゃうけど。。。まぁ、「ねつ造ではない」というのは妥当な解釈だとワタシは思います。