論文捏造は×、では特許データ捏造は?
まずは、早稲田大学 松本和子教授の不正問題から。
あろうことか論文の問題も出てきたようです。
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200607060588.html
このニュースをそのまま読むと、
またいろいろと誤解が生じそうなので
ちょっと解説。
上記リンク先から一部引用(asahi.comの記事)
>しかし、別の研究者の実験では、
>蛍光の明るさを示す測定値(量子収率)が、
>論文の半分前後の値しかでなかったという。
>松本教授は朝日新聞の取材に対し、
>研究室内でも値が高すぎるという指摘があった、と
>明らかにした上で
>「通常の実験方法で測定したら、そのような値が
>得られた。実験データは残っている。
>これを高すぎるからといって変更はできない」
>といっている。
>なぜ高い値を示したかの調査は、
>「研究の主目的から外れるのでやらなかった」という。
これだけ読むと「なんて悪いヤツ!!」って
憤慨してしまいそうですが、
これは、研究者的には普通の反応なんです。
実験データを元に論文を書くときには、
もちろん実験で得られたデータをそのまま利用します。
たとえ通常あり得ないように見えるデータが出ても、
再実験して再現されれば、それが真実とみなされます。
(もしかしたら今までにない、大発見かもしれないし)
「これを高すぎるからといって変更はできない」のは、
そのデータを真実とみなして論文を書いたのだから、
ごく当たり前です。
もちろんたまには、別の研究者が追試して、
同じ結果が出ないこともあります。その場合、
その研究者がその追試データを元に論文を書いて、
論文雑誌に「反論」として投稿するのが通例。
それに反論があれば、またさらに論文を投稿して反論。
そうやって論文をつき合わせて議論していくのが、
科学世界の研究ルールになっています。
>なぜ高い値を示したかの調査は、
>「研究の主目的から外れるのでやらなかった」
これも言うなれば当然の反応です。
理想をいえば、なぜこんなに高い値なのか、
そこを詳しく調べれば
新しい現象が見つかるかもしれません。
(これも大発見かもしれないし)
でも不幸にもその時間的・資金的・
人手的余裕がなかった場合、
脇道にそれた研究は、
惜しみながらもあきらめるケースは多いものなのです。
つまり、松本和子教授の言っていることは
至極まとも、至極まっとう。
押しの強い感じでずばずばとしゃべる方なので、
あるいは良い印象は受けないのかもしれませんが、
当該記事の醸しだしている「悪人」の印象は、
かなりねじまがっていると言わざるをえません。
今後どうなるかは、論文データの追試や
実験ノートの検証、
あるいは実験者(中国人研究者)への
インタビュー結果を待たねばなりませんが、
どうなることやら。
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発覚すると大騒ぎ、その後の研究人生が絶たれる
論文捏造に比べ、
「特許のデータ捏造」は、かなり日常茶飯事です。
私も、会社員時代に
適当なデータをでっち上げて、
特許出願をした経験があります。
会社の上司は当然のように
「適当にそれっぽくデータつくっといて」と私に指示し、
私は、はいはいとうなずいて
ぺらぺらぺら~とそれっぽくでっちあげました。
よく言えば「思考実験」ってやつです。
一見マズそうですが、これは大丈夫。
なぜなら、特許申請は「権利を押さえるための手段」
であって、データの信憑性は
全く問題にされていないからです。
とはいえ最近は、大学で特許を申請するケースも多く、
その申請を根拠に、予算を得ることも多くなっています。
この場合、捏造でっち上げデータの特許で
予算もらっちゃってもいいの?
この質問に対する一つの答えが、
神戸大の特許問題で明らかになりました。
記事によると、関係者は訓戒処分ですんだそうです。
バレたのでちょっと注意しなきゃいけなくなったけど、
まぁ別にあんまり問題ないよ、って感じですかね。
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特許の捏造データ・神戸大の件に関して
興味がおありの方は、
以下のブログでも詳しく書かれているので
ご参照下さい。